火事場の安否確認

-- 刑事さん、あの人です。--

おいしいゴハン

 ハルオさんは風邪をひいていましたが,その日はヨシコさんが新幹線に乗って遠くの町から会いに来ることになっていました.
 いつもならば,新幹線の駅までヨシコさんを迎えに行くハルオさんですが,今日は風邪のハルオさんを気遣って,ヨシコさんひとりで慣れない電車を乗り継ぎ,ハルオさんの家までやってきました.
 ハルオさんの家に着いたヨシコさんは,ベッドの上にむくりと起き上がったハルオさんを見るなり,「ゴハン買ってくる」と言い残し,タタと玄関を駆け出して行きました.
 やがて両手に抱えたコンビニ袋をいっぱいに膨らませて戻ってきたヨシコさんは,袋の中身をベッドの上にひっくり返し,「さあさあゴハンだよ」と言いました.
 そのメニューはと言えば,

 コンビニ弁当,おにぎり,菓子パン,プリン,お茶,ポカリスエット...

 病人に食べさせるにはどうか,と思われるものもありましたが,ハルオさんはなんだかとってもうれしくって,うれしくって,胸をいっぱいにしながら,「ありがとう,ありがとう」と一生懸命食べました.
 味なんかよく分かりませんでした.

 翌朝目が覚めると,風邪はすっかりよくなっていました.


 3年後の夏の日,ハルオさんは熱を出して仕事を休み,独りぼっちで寝込んでいました.
 あの日のことが頭に浮かんだハルオさんは,「ああ,あれが人生の中で一番おいしいゴハンだったなあ」と思い出しながら,天井をぼんやり眺めて,独りぼっちで寝込んでいました.


  1. 2004/08/11 (Wed) 22:33:55|
  2. 与太話
  

-->