火事場の安否確認

-- 刑事さん、あの人です。--

深夜徘徊

 家の近所に 「福しん」 という,客層が比較的低所得者寄りの中華風定食屋があります.月給500円の私もご多分に漏れず,会社周辺で晩飯を食いそびれたときにはちょくちょく利用します.
 三行目から早速話が逸れますが,私は汚い身なりの中高年男性に非常に好かれる傾向がありまして,例えばこの福しんでは,ガラガラの店内に私一人しょうが焼き定食をモソモソ食っていると,ぐしゃぐしゃのスポーツ新聞を片手にチンコを掻きむしりながらスメル中年男が入場,わざわざ私の20cm 隣にぴったり着席し (席の間隔が異様に狭い) ,吐き出した痰を水で流し込みながら 「じっさやっさひぉひょごっもむしぞぃりのー」 とかなんか全然分からない音を出して注文を済ませると,俺の顔に裏拳を見舞わんばかりにバッサー新聞開いてスメルを振り撒き,10秒に1回痰を吐き,口角から餃子の残滓を垂下し,汁を拡散しながらラーメンをすすっては咽てグシャ新聞の紙面に麺だのネギだのを飛ばして,それをまた食ったりとかしてんですよ.
 そういうのが一度や二度じゃないんですよ.
 なんかドキュンな感じの中年夫婦が俺の隣で醜態極まりない喧嘩とか始めんですよ.
 ドキュンな老婆が俺の後ろを通るときにおもっきり体当たりして俺のカバンも床に撒いて謝りもしねえんですよ.秋葉のヲタみたいにさ.

 書いててむかついてきた.
 まあいいや,そんでこないだ金曜日に懲りもせずそこで食って帰ろうと思ったんですよ.23時半頃にお店の様子を窺ったら労務者が満載じゃないですか.
 うおー金曜の夜ってこんなに混んでたっけ?と思いながら一旦見送って帰宅したんです.
 で,しばらくマッタリして0時半くらいに出直したら (駅から家まで2分くらい.福しんはその間なので超近い) ,今度は店内で順番待ちができてるんですよ.並んで食うような店ではまったくないんですけど.
 じゃあもう福しんはいいやってんで見限って,ちょっと先にある松屋に行ったらここも満員ですよ.
 なんだこの町は.どっからこんなに人が湧いてきたんだ.

 それでなんだかもうムシャクシャしてきたんでそのままどんどん歩いたんです.
 某有名都道に出て,タクシーがアホみたいに行き交う中をずんずんずんずんずんずんずんずん歩いてるうちに心が安定してきたんで,フイと横道に入ってみれば,そこはどこにでもありそうな住宅街ですよ.
 ああ,こんなに住宅街然とした住宅街は久しぶりに見たなあ,と思って彷徨い始めると,

 あっ,このボロいアパートいいなあ.

 あの派手な照明のマンションもかっちょいいなあ.

 小学校の校庭には満開の桜が白く浮かび上がって揺れているし,都道沿いのガソリンスタンドは目も眩むばかりの光を放って住宅街の家並みを煌々と照らし出している.
 空を見上げれば,青黒く染み出したヌメリの中を,低く立ち込めた雲が街の灯りを紫色に湛えながら流れており,その隙間からは (ほぼ) 満月が覗いている.

 そんな具合に夜風に流されて徘徊していたら居ても立ってもおられず,急いで家まで引き返した私は,カラスの行水よろしくシャワーを浴びてから,カメラと三脚を担いで再び玄関をまろび出て,途中相変わらず人間がみっちり詰め込まれた福しんに悪態をつきながら30分後,改めて同じ辻に立って空を仰いだのでした.




 帰り道に寄った福しんはガランガランで,店内の時計は3時を示さんとしておりました.
 そしてその下に掲げられた貼り紙には 「本日餃子100円」 の文句が.

 あぁ,それでね.


スポンサーサイト



  1. 2007/04/02 (Mon) 02:47:49|
  2. 与太話
  

-->