火事場の安否確認

-- 刑事さん、あの人です。--

セクハラ怖い

 私がノノ痰やゴッ珍に人生を捧げるきっかけとなった宴会芸ですが,そのとき私のメイクを担当してくれたのは部署の庶務さんでした.
 名前を(゚×゚)さん(仮名)といいます.
 風鈴のような声色でころころとよく笑う,ヒーリング庶務さんでした.顔のデザインに関しては特にコメントはありませんが,「下ネタしか言わない美少女」を理想とする私との間では,ごくごく当たり障りのない会話しか成立し得ない下ネタ非対応の(゚×゚)さん.
 でも,今まで出会った人の中で声は一番印象的かもしれない.なんか,皆口裕子さんのような.声が聞こえるだけでにこにこいや,そんな話はどうでもいいんですが,その(゚×゚)さんが契約期間満了を理由に突然退職してしまいました.

 通例ならば,世の慣習に倣ってしめやかに送別会を催し,部署の皆さんで浴びるように酒を飲んで総員人事不省に陥るところなのですが,本人のカミングアウトが退職前日だったため,親睦委員の私も何もできずじまいでした.
 当日もそれらしい挨拶すら一切なかったので,私の方から永訣の感を発表することを決意し, (゚×゚)さんの席に向かいました.

 いつもの(゚×゚)さんなら既に退社している時間だったのですが,業務の引継ぎがあるのでしょう,まだPCに向かって何やら作業をしています.


(´▽`):「(゚×゚)さん,おつかれさまでした」

(゚×゚):「あっ,ありがとうございます(^・^)」

(´▽`):「セックルしませんか」

(゚×゚):「これからもがんばってくださいねもみもみ(^・^)」

(´▽`):「ありがとうございます,(゚×゚)さんもおぱーいおぱーい」


 抜粋してもおもしろくも何ともない至って事務的な挨拶が,最後に交わした言葉となりました.

 あくる朝,私が出勤してメールをチェックすると,予想されたことではありますが,(゚×゚)さんから部署全体に挨拶メールが届いています.

 そこには.


 あなたがたのうちの複数の人間が,如何に私にセクハレーションを働き,それにより私が如何に嫌な思いをして退職を余儀なくされたか,一連の経緯において統括部長の対応が如何にひどかったか,という内容が 7000字に渡って連綿と綴られていた.


 事実をもみ消そうと図る会社の態度に我慢できず,一切合財を告発した鼻血も覚悟の作文です.
 しかし,登場人物が容易に特定でき,メールのやり取りまでばんばん引用された,そのぐちょぐちょなエッセイを朝っぱらから精読してしまった私は,関係者の顔をひとつひとつ浮かべては居たたまれなくなり,遠い南の島に旅立ちたくなりました.でもお金がないのでトイレに旅立ちました.
 同日開かれた臨時ミーティングで,担当部長さんの異動が発表されました.課員に向けた彼の最後の挨拶は,ビジネス相手に対する我が部の尊大な態度と,若年社員を道具として使う職場の風潮に警鐘を鳴らす内容でした. 担当部長さんは,(゚×゚)さんの件で何も策を打とうとしない統括部長さんを見かねて奔走していたといいます.私が今後のキャリアに悩んでいるのを目ざとく見出して声をかけ,何時間も話を聞いてくれたのもその担当部長さんでした.

 ミーティングでは(゚×゚)さんのことについては何も触れられず,そのあとは,セクハレート容疑の当事者もそうでない人も,いつもどおり何事もなく仕事をこなしていました.誰も何も言おうとはしませんでした.

 私は相変わらずトイレの窓から,子供の頃の夏休みに見上げたのと変わらない,よく晴れた青い空を眺めていました.


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  1. 2004/08/02 (Mon) 01:24:45|
  2. 与太話
  

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